ドライに聞こえるかもしれませんが、お仕事上、できるだけのことをするということにすぎません。もちろん、死んでほしくないとは思っているのですが、現実はそうでしょう。同じ「自殺しないように」と言っても、家族と職業上関わっている人とでは、思いの質は全然違うのです。その区別がつかないというところにも、境界性人格障害の病理が表れているのですが、私としてはこういうところは、わざと突き放し、その程度の脅しではびくともしないところを見せます。もちろん、「それでも精神科医ですか」と言われても、びっくりして反応したりはしません。境界性人格障害の精神療法においては、治療者の質量感というものが大事だと思います。質量感というのは、存在の重みです。つまり、患者がどんな行動を見せても、あたふたしたりせず、じっとついていく。そして、その時々に必要なことをする。そういう態度です。ですから、実際に手首を切ったなどの際にも、淡々と処置をし、あるいは淡々と救急外来に紹介します。「熱くならず、見捨てず、ついていく」精神科医の中にもいろんな考え方がありますが、私はこれをモットーにしています。