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小売側の購入者育成戦術

小売側の購入者育成戦術としては、ミシンの積立て貯金制度があった。販売店に一定の金額を毎月先払い(積立て)していく。定価ぶんまでたまらないと現物のミシンは渡してもらえない。しずめ逆月賦システム。当時の日常服は手づくりするものだったから、ミシンは必需品だった。そんなカネ不足の時代に、正常な通信販売が成り立つわけはない。顔を見たこともない客に現物を先渡しするなど、夢にも発想できない商売だった。おカネを先に出しなさい、そうしたら商品を送るよという通信販売は存在したが、客もまた、見も知らぬ通販会社に貴重なおカネを先渡しするなんて、とんでもない話だった。モノ不足カネ不足の四五〜五〇年代は、売り手と買い手の相互信頼性が確立できない通信販売不毛の時代であったわけだ。近代的な通信販売はカネ不足が克服されはじめた六〇〜七〇年代の高度成長期に入って、やっと産声をあげることになる。しかしなお、七〇年代は通信販売の幼少期であり、当時の買い物行動はもっぱら百貨店に代表される店舗販売に集中していた。六〇〜七〇年代は消費者がモノ不足を埋めるための現金を所有しはじめた時期であり、買い物とは、不足しているモノをやっと入手する、めったにないハレの行為であったからだ。