アメリカに手厳しい。「アメリカの市場は毛皮に太鼓判を押しているみたいに思えるわ。いろんな種類の毛皮が使われていることを喜ばしいことみたいに扱ったり、毛皮反対運動の支持者をあざけるように、森の中でファー・コートの絵を銃撃してみせたりして。私自身、アメリカのデザイナーが再び毛皮を歓迎したことにはショックを受けたわ。以前は拒絶していたデザイナーやスーパーモデルまで同調しているんだもの。しょせん、ファッションなんて移り気なものなのね。毛皮は金になるし、ファー・コートを作る会社は簡単にはつぶれそうもない。で、スポンサーシップみたいな賢い財政的てこ入れをすることで、毛皮は無事マーケットに帰って来られたというわけ」。消費者というのは感じやすいものだ。実際にトレンドのスタイルで街を歩く人など見なくても、何がトレンドなのかはわかる。たとえば、迷彩柄のトップスがこの秋の流行だとしよう。そうした商品が雑誌類で取り上げられて店頭に現れ始めれば、一五歳の少女だって、実際に誰かが着ているところを見るまでもなく、これが最新トレンドなのね、と気づくことだろう。同じように、サガなどのマーケティング組織が新たな毛皮人気の到来を絶えず触れ回るうちに、そうした大げさな宣伝という〈宣言〉が自己実現する形になったのである。まず、毛皮業界団体が、仕上げ前の毛皮を無料提供したり、設備を貸したり、広告パートナーになる話を持ちかけたりして、デザイナーにもっと毛皮を使ってもらおうと攻勢をかける。それに乗った複数のデザイナーが、次のショーのために毛皮を使った服を作る。常にそのシーズンのトレンドとなるものを探しているファッション・メディアは、少なからぬデザイナーが毛皮を使ったことに着目し、雑誌や新聞、テレビで毛皮の復活を宣言。ファッション・ショーの総括記事を読んだメーカーや小売業者が、毛皮使いの服の需要増加を見越して製造量を増やす。その他の店も、大規模小売店が毛皮を仕入れているという「ニュース」を聞きつけ、これに倣う。最後にこの連鎖を完成させるのが、突然巷に毛皮が溢れかえったことに気づき、トレンドに乗り遅れまいとどんどん毛皮を買い込む消費者である。毛皮の需要は、売り込む側の人間が何食わぬ顔で操作したものだったわけだ。いったん大衆の心に種を蒔いてしまえば、マーケティング攻勢はいよいよ激化する。